by マーケティング部 おさい
AIによって「賢さ」の価値が下がっている
AIがすさまじいスピードで進化している今、「賢さ」の価値が大きく変わりはじめています。たんなる知識や論理的な「賢さ」の希少価値は、どんどん下がりつづけています。
これまでは、高いIQ(知能指数)や、知識が豊富なことなどの「賢さ」が重要だとされていました。偏差値の高い学校に入って、たくさんの知識を詰め込んで、テストで高得点を取ることが、価値のあることだとされていました。
ですが、AIの登場によって、その「常識」が大きく揺らいでいます。調べ物や、文章作成、アイデア出しなどなど、これまで「賢い人」が得意としてきたことの多くを、AIが一瞬でこなしてしまうようになったからです。
その一方で、「AIを活用し、未来を切り拓く能力」として、「ハイエージェンシー」、つまり、「主体的に行動する能力」が、AI時代に活躍するための重要な資質として、注目されています。
スポーツカーとエンジンのたとえ話

AIは、おどろくような精度と速度で作業を実行してくれる、とても便利な「道具」です。ですが、AIはあくまで道具であり、自発的に行動してくれるわけではありません。「なにがしたいのか?」、「どんな未来にしたいのか?」、その目的を設定するのは、私たち人間の役割です。
たとえば、どんなに高性能なエンジンを搭載したスポーツカーがあったとしても、「どの方向へ向かうのか?」を決めるドライバーがいなければ、それはただの鉄の塊になってしまいます。
同じように、AIという高性能なエンジンをどう活かすかは、私たちの主体性(エージェンシー)にかかっています。AIを使いこなして、新しい価値を生み出すのか? それとも、AIに指示されるだけの存在になるのか? その分かれ目は、あなたがどれだけ主体性(エージェンシー)を発揮するかにかかっています。
このように、変化の激しいAI時代には、自分で「向かう先」を決めて行動を起こす、ハイエージェンシーな人(高い主体性を発揮している人)が、新たな価値創造の担い手となりつつあります。
AI分野のスーパースターが語るエージェンシー
この「エージェンシー(主体性)は、「賢さ」よりも重要」という考え方を提唱しているのが、AI分野のスーパースター、アンドレイ・カーパシーさん(アンドレイ・カルパシーさん、Andrej Karpathy)です。(※上の動画で講演している人が、アンドレイ・カーパシーさんです)。
アンドレイ・カーパシーさんは、ChatGPT を開発した OpenAI の創設メンバーであり、AI研究者としても活躍しています。また、電気自動車メーカーのTesla(テスラ)では、自動運転技術の開発を主導しました。さらに、スタンフォード大学でAI研究の指導を担当するなど、輝かしい経歴と実績をもつ、AI分野の第一人者です。
(※参考:アンドレイ・カーパシーさんについては、「コンテキストエンジニアリング」の記事でも紹介しています。)
そんなAIの最前線を走るアンドレイ・カーパシーさんは、エージェンシー(主体性)と「賢さ」の関係を、下のような不等式であらわしています。(後述のXポスト参照)。
主体性(エージェンシー) > 賢さ(インテリジェンス)
この不等式は、AIの発展によって、「賢さ」(インテリジェンス)の価値が相対的に下がり、主体性(エージェンシー)の価値が高まっている、ということをあらわしています。
ハイエージェンシーな人って、どんな人?

アンドレイ・カーパシーさんは、「エージェンシー」という言葉の意味を、「自ら率先して行動し、意思決定を行い、自身の行動と環境をコントロールする能力」だと説明しています。かんたんに言うと、「自分の人生のハンドルを握る」ということです。(※くわしくは、下のアンドレイ・カーパシーさんのXポストをご参照ください)。
自分の人生の行き先を誰かに決めてもらうのではなく、自分の意志でハンドルを握り、進むべき道を選ぶ。ハイエージェンシーな人、つまり、主体性が高い人とは、「自分の意志でハンドルを握る生き方」を実践している人のことです。そのような人たちは、ただ状況に流されるのではなく、自分の人生を自分で切り拓いていきます。
Agency > Intelligence
— Andrej Karpathy (@karpathy) February 24, 2025
I had this intuitively wrong for decades, I think due to a pervasive cultural veneration of intelligence, various entertainment/media, obsession with IQ etc. Agency is significantly more powerful and significantly more scarce. Are you hiring for agency? Are… https://t.co/8yvECKi7GU
※下の文章は、上のアンドレイ・カーパシーさんのXポストを意訳したものです。
主体性(エージェンシー) > 賢さ(インテリジェンス)
私はこのことを何十年も勘違いしていました。たぶん、「賢さ」を過度に崇拝する文化や、いろいろな娯楽やメディア、IQなどにとらわれてしまっていたせいだと思います。エージェンシー(主体性)は、「賢さ」よりもはるかに強力で、はるかに希少です。あなたは人を採用するときにエージェンシー(主体性)を基準として人を採用しているでしょうか? 私たちはエージェンシー(主体性)をはぐくむ教育をしているでしょうか? あなたは自分に10倍のエージェンシー(主体性)があるかのように行動しているでしょうか?
(下記の)Grok(グロック)の説明は、おおむね正しいです(※引用者注:以下の文章は、アンドレイ・カーパシーさんとGrokのやりとりのなかで、Grokが返した返答の一部であるようです):
「性格的な特徴としてのエージェンシー(主体性)は、主体的に行動し、意思決定を行い、自分の行動や環境に影響を及ぼす能力を指します。これは、受け身で反応するのではなく、能動的に行動することに関するものです——エージェンシーが高い人は、人生のなかで遭遇する出来事をただ起こるに任せるのではなく、自分でそれをかたちづくります。自己効力感や、決意、「自分の進む道は自分で決める」という感覚が混ざり合ったものだと考えることができます。
強いエージェンシーを持つ人(主体性の高い人)は、目標を設定し、障害があっても自信を持ってそれを追いかける傾向があります。彼らは「なんとかしてみせる」と言って、本当にそうします。反対に、エージェンシーが低い人(主体性が低い人)は、自分の人生の「乗客」であるかのように感じがちで、運や他人、状況などの外部要因が、次に何が起きるのかを決めてくれるのを待っているようなところがあります。
エージェンシー(主体性)は、自己主張の強さや野心と完全に同じものではなく、部分的に重なる程度です。エージェンシー(主体性)は、もっと静かで、内面的なものです——「自分ならできる」という信念と、それを実際の行動にまでつなげる意志の組み合わせです。心理学では、よく「統制の所在」(※1)と結びつけて語られます。ハイエージェンシーな人(高い主体性を発揮している人)は、自分が運命の舵を取っていると感じる「内的統制」に傾きやすく、エージェンシーが低い人(主体性が低い人)は、人生で起こる出来事を「自分以外のなにかによってもたらされるもの」と見なす「外的統制」に傾きがちだとされます。」
(※1:引用者注:「統制の所在」(ローカス・オブ・コントロール)とは、「自分の人生や行動の結果が、何によって決まると考えているか(その原因が、自分だと考えるのか、自分以外のものだと考えるのか)」という、「考え方のクセ」のことです。)
エージェンシーを高めるには、どうすればいいの?
では、どうすれば、エージェンシー(主体性)を高めることができるのでしょうか?
ひとつのヒントとしては、「なんとかする」という考え方を持つことです。これは、アンドレイ・カーパシーさん自身が、上のXポストで、ハイエージェンシーな人(高い主体性を発揮している人)の特徴のひとつとして挙げていることです。
なにか問題が発生したとき、「もうだめだ」と考えるのではなく、「どうすればこの状況を乗り越えられるだろうか?」と、解決策を探す考え方のクセをつけることが重要です。この小さな考え方の変化が、主体性を育てる土壌となります。
また、上のXポストでは、エージェンシー(主体性)に関連する言葉として、心理学用語の「統制の所在」(ローカス・オブ・コントロール)という言葉が出てきます。ハイエージェンシーな人(高い主体性を発揮している人)は、「成功も失敗も、その原因は自分自身にある」と考える傾向があります(これを、「内的統制」と呼びます)。つまり、自分の行動やその結果に対して責任を持ち、自分次第で状況を変えることができると信じているということです。
ハイエージェンシーでいこう!

今回の話をまとめると、今のAI時代には、高いIQ(知能指数)や、知識が豊富なことなどの「賢さ」の価値が相対的に低下していて、それと入れ替わるかたちで、自分の意志で未来を切り拓くハイエージェンシー(主体性の高さ)が、大きな価値をもつようになっている、ということでした。
エージェンシー(主体性)は、AIという強力な道具を使いこなし、より創造的な未来をつくるための重要な能力のひとつだと言えるでしょう。AIはとても便利ですが、AIの可能性を最大限に引き出すためには、あなた自身の主体性を発揮する必要があります。
あなたも自分の人生のハンドルを握って、ハイエージェンシーな生き方をしてみませんか?





